29年第1回定例会の区議会だよりが発行されました。 (1)質問・質疑 区議会便りに掲載された一般質問および総括質疑の概要は以下の写真の通りです。 ①一般質問 (2)討論 今回は予算に関連する討論と、意見書に関する討論を行いました。 なお、「討論」というと一般的には、諸手を挙げて強力に賛成あるいは反対をしていて、相対する勢力の相手(同僚議員)を説得したり、議論でねじ伏せるイメージが持たれがちです。しかし、議会においては、自らが賛成・反対する理由を述べたり、行政側に注文を付ける場合、賛成・反対はするが全面的な賛成・反対ではなく留保をつける際などに多く用いられます。 今回の定例議会の討論の概要は以下の通りです。(これは討論時の手元原稿であり、口述筆記や正式な議事録に記録される内容ではありません。) ①予算についての討論 ( 介護保険特別会計 および 一般会計に関する賛成討論 ) 第5号議案平成29年度中野区一般会計予算及び、第9号議案平成29年度中野区介護保険特別会計予算について賛成の立場で討論をいたします。 まず、介護予防・日常生活支援総合事業などの地域包括ケアを含めた介護保険特別会計についてです。 介護保険会計の予算規模は219億1300万円で、前年度比2億円の増となっています。歳入では介護保険料収入が95,32万円の増、一般会計からの繰入金が7984万円の増となっています。歳出では新制度の開始にあたり保険給付費の事業から介護予防・日常生活支援総合事業を含む地域支援事業費に移るものがあり、保険給付費が9億5845万円の減、その金額を上回る形で地域支援事業費が10億7575万円の増となっています。そして、介護給付費準備基金積立金の積立額が前年度比2073万円増の2億4751万円で、とりくずしは0円、年度末残高は25億2058万円です。 歳入の増の多くが地域支援事業に使われ、また基金の積み立てにも回されています。 介護予防等を含む地域支援事業をしっかりと行うことで、保険給付費の伸びを抑えていくこと。また将来の受給者増に備えた基金への積立を着実に行うことが期待されます。 なお、介護予防・日常生活支援事業については、新しい部署が28年4月に立ち上がり、地域包括ケアの仕組みづくりにかけられる1年間しかない中、心配もしていましたが、29年度は区の実態を踏まえた認知症対策や介護予防の制度がスタートすること、今後もさらなる改善が見込めることを評価します。 また、新規事業として基準緩和型訪問サービスに関連して、276万円を計上している介護人材の確保・育成のための研修などが始まりますが、これまでも行われていた研修等を含め、しっかりと利用する人やその家族が安心できる地域包括ケアを担う人材の育成が進められるよう要望します。 次に、一般会計予算についてです。 予算を性質別でみると、扶助費が12.3%、金額にして43億72,37万円の増加となっています。少子高齢社会においてこうした福祉に関係する義務的な経費は今後も増加が見込まれます。 こうした中で、歳入の確保や、社会的なひずみを極力もたらさない形での歳出の削減による財源の確保が重要となります。 歳入については区税の収入率のさらなる向上が掲げられていることに期待をしています。そして、歳出の削減についてです。ここ数年は毎年、月45時間を超える超過勤務をした職員数がのべ300人超、月100時間を超える超過勤務をした職員の数がのべ30人超で推移をしていて、これを減らすことが求められます。29年度については、一般会計分の人件費を見ますと一般職の職員は28年度の1894人から29年度は1937人へと増える一方で、時間外勤務手当は前年比1307万円の減の5億4千万円余となっていることを評価します。業務の効率化や整理により超過勤務を減らし、時間外勤務手当のさらなる削減を期待します。 そして、歳出です。 第一に、子どに関する人材の確保、基盤の整備として、 新たな保育士等人材確保事業、スクールソーシャルワーカーの増員、私立幼稚園の特別支援教育補助として障碍児の対応をする職員を確保するための経費の補助、児童相談所設置に向けた心理職職員の採用、就学前の障碍児への巡回指導等の体制強化、病児保育の開始などを高く評価します。 とりわけ幼児期の特別支援教育については私立幼稚園でも特別な支援を必要とする子どもに対して介助を行う職員の加配ができる金額の補助が実現したことは大きな前進であると思います。 第二に災害対策でのまちづくりと二次避難所に関する点です。 特に中野区は建物倒壊危険度よりも延焼危険度が高い地域が多く、木造密集地の建物の不燃化や道路の拡幅が急務です。29年度の予算では木造住宅密集地域整備や不燃化促進事業などを含め、まちづくり事業費が約2億5千万円増え、6億9308万円となりました。 職員が足しげく建物の所有者のもとに足を運び、説明を重ねて同意を得るという方法で道路の拡幅や建築物の不燃化が進展することを評価します。29年度は事業を着実に進めるとともに、計画的に火災に強い中野の街づくりを進めるための全区的な計画の作成も期待します。 また、災害弱者・災害時要援護者について、これまで水・食糧等の備蓄物資が配備されていなかった二次避難所10か所に備蓄物資の配備がされることを評価します。今回は高齢者向けの二次避難所への備蓄ですが、翌年度以降に障碍者や乳幼児向けの二次避難所の備蓄が進められるよう29年度中に検討を進めていただき、その年齢や障害の特徴も配慮した備蓄がされるよう要望をしたいと思います。 なお、課題としては、保育所や福祉施設を予算を付けるだけでなく、誘致のための工夫などもしながら増やしていくことや、精神障碍者に対する福祉手当の支給の開始について検討を急いでいただきたいと思います。 そして、最後になりますが、区がどんなによかれと思って素晴らしいものを作ろうとしても、新たなものができること、従来のものがなくなること、しくみが変わることについて、不安を感じる人がいます。こうした中で、憶測や不正確な情報が広まってしまったり、区に対する懐疑的なムードが広がってしまったりすることがあります。しっかりと区民の声を聴き、丁寧な説明責任を果たしていただけるよう要望します。 こうした課題も指摘したうえで、先に述べたような評価すべき点から、第5号議案平成29年度中野区一般会計予算及び、第9号議案平成29年度中野区介護保険特別会計予算についての賛成討論といたします。 ②「テロ等準備罪の新設中止を求める意見書」に対する討論(意見書に対する反対討論) このたびの「テロ等準備罪の新設中止を求める意見書」について、「新設の中止を求める」という主旨は理解できるものの、その理由として示されている考え方などについて同意しかねる部分があります。よって、本意見書に反対の立場からの討論をいたします。 本意見書には犯罪の既遂ではない、未遂・予備・陰謀を取り締まることは思想・良心の自由に反する旨の記載があります。 しかし、現行の刑法においても、内乱、外患及び私戦の各予備・陰謀罪が定められており、殺人・身代金目的略取等・強盗及び放火の各予備罪・凶器準備集合罪等、重大な犯罪について、陰謀罪、共謀罪、予備罪、準備罪などの規定が設けられており、それが即、思想・良心の自由を定めた憲法に反するものとはみなされていません。 たとえば、既存の法律では一例として、 刑法第81条で「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。」 第82条で「日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは2年以上の懲役に処する」との規定があり、 さらに、第87条と第88条でこれらの犯罪について「未遂」や「予備」や「陰謀」も罰するとしています。 また、刑法で定める、「予備罪」や「陰謀罪」については、第93条「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者」に対する「禁錮刑」を定めており、2014年に実際に適用された例があります。 テロ等準備罪をめぐっては、テロに関する組織的な犯罪集団の明確な定義がないままにテロ等準備罪を設けること、「テロ等準備罪」の捜査手法に将来的な通信傍受や監視型捜査の拡大についての歯止めをかけていないこと、無差別殺人や大量殺人と直接的な関係のない犯罪にまで拡大する余地のあるものであること、などについて問題があると思われ、先般閣議決定されたような形でのテロ等準備罪の新設については行うべきではないと考えます。 しかし、本意見書では、「既存の法律の適用で対応可能」というくだりもありつつも、未遂・予備・陰謀を取り締まることが思想・良心の自由に反する旨の記載もあります。 国民の自由と安全の双方を追求する見地から、慎重かつ十分な検討を行ったうえで、テロを含む重大犯罪に関して既存の刑法を適用して未遂・予備・陰謀を取り締まる場合についてまで、憲法の定める思想・良心の自由という考え方に反するものと読み取れかねない本意見書については賛成いたしかねるものです。 以上の理由から、反対の討論といたします。
by wishizaka
| 2017-04-26 00:51
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