立花隆先生の74歳の誕生日会がありました。 立教大学21世紀社会デザイン研究科(博士前期課程)の立花ゼミ元履修生のメンバーも数多く参加し、 誕生日会の後は先生の事務所で立ち飲みならぬ立ちゼミ状態で久々に先生や懐かしい面々と、アウシュビッツ絶滅収容所の話や、先生の学生時代の話、歴史の転換点の話など、テーマはいろいろと広がり、愉しい時間となりました。 院生時代に立花ゼミでは、「戦争」「性(セクシュアリティや性欲について)」「食(学食)」など様々なテーマが取り上げられました。なかでも、大きなイベントとしては、立花ゼミの活動の一環でNHKの「ETV2001『シリーズ戦争をどう裁くか』」を素材に、色々調べたり、議論をしたりした上で、他大学の先生を招いてシンポジウムを実施したりもしました。 その時の素材となったシリーズ番組の中でも「第4回 和解は可能か」が自分の中で今でも強く印象に残っています。 南アフリカにおける初の黒人政権であるマンデラ政権は、被差別者であった黒人が、差別者であった白人を裁くのではなく、真実和解委員会において真実を明らかにすることで、政治的な背景でなされた暴力行為を赦すということを行いました。 「罰する」ことを前提とした裁きでは、加害者は口を閉ざしてしまう。真実を明らかかにするためには『赦す』ということが必要となる」という方針を採りました。 「和解」について、マンデラ元南アフリカ共和国大統領の 「忘れることはできないが、許すことはできる。対話によって分かりあう。一人一人の力で世界を私たちがよりよい場所に変えることができる。」といった主旨の言葉がいまでも耳に残っています。 これに関して、映像の他の出演者や、ゲストで来て頂いた先生などの声として 「和解と言う目標に向かって新しい一歩を踏み出すことを恐れない、その大前提になるのは真相の究明。何があったのかということが分からなければ、これは曖昧にすることとまったく同じになってしまう。後ろを見ながら前に進んでいく。やはり過去を直視し受け止めることがなければ、現在の危険性に対して警戒を向けることも、新しい未来を拓くこともできない。」、 「(しかし、真実を明らかにし、許すことで新しい社会秩序を作るということが)ひとつ間違うと、秩序を形成するために、『被害者は悔しいだろうけれど許しなさい』といわれているように感じてしまう。」、 「許すことができるのは犠牲者本人だけ。厳密に考えれば、許しと言うのは加害者と被害者が向き合って、直接にお互い個と個の関係において行われることだろう。(真実和解委員会と言う舞台では第三者が許しを行っているように見えてしまい、納得できない遺族もいる。)」 「(だけれども)真実を正しく認識をすることが、同じような歴史の繰り返しを防ぐことになる。それなくしては、政権をとった黒人側が、他人種に対して、あるいは人種内部において新たな被差別者を生み出す可能性もある。それゆえに真実を知ることこそがもっとも大切」という声があり、 そしてそれは 番組内にも出てくる「新しい正義を生み出すための痛みではないか」という言葉に至るものでした。 マンデラ元大統領はアパルトヘイト撤廃に向けた運動の中で、過酷な仕打ちを受けながらも、アパルトヘイト(人種隔離・差別制度)撤廃への信念は揺るがず、しかし、「報復」や「復讐」という気持ちを持つこともなく、白人と「非白人」の和解に粘り強く努め、お互いの理解と協調を訴え続けた活動家でした。 これは南アフリカのアパルトヘイトに限った話ではなく、世界中で無くならない様々な戦争はもちろんのこと、様々な差別や抑圧に関して言えることではないかと感じています。
by wishizaka
| 2014-06-28 21:12
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