では、区独自のパートナーシップ制度がない中野区の場合、公正証書を作成し、実態として共同生活を送っている同性カップルについて、どのような取り扱いがなされるのでしょうか。 当然ながらパートナーシップ制度がありませんから、一枚の証明書で簡単に二人の関係を証明することはできませんが、毎回複数ページにわたる公正証書を窓口等に持参をすることは可能です。(後述の記載などから勘案すると、中野区に限らずパートナーシップ制度がない自治体においても国の法律に基づく公正証書を作成することが、パートナーシップの証明として有効である可能性が高いものと思われます。) ただ、公正証書を毎回持参する場合、行政等がチェックをする際にはそれなりに時間がかかることになるかと思われます。この負担は同性カップルにとっての時間的負担はもちろんのこと、行政サイドの時間的負担や労力的負担を伴います。多くの自治体で多くの同性カップルがこうした公正証書を行使し始めれば、「だったら、証明書類一枚で済むパートナーシップ制度を制度化したほうがお互いの負担が減ってよいのではないか」というきっかけにもなりうるのではないかと思われます。また、公正証書を持ち込むカップルが増えることは、同性カップルの存在の顕在化や、同性カップルが抱えるニーズの顕在化をすすめることとなり、これもパートナーシップ制度を後押しする力になるかと思います。 中野区はもちろん、他の自治体においても多くの同性カップルに公正証書を作成して行使してもらえればと思うところです。 参考に中野区議会における石坂の一般質問とその答弁(行政側の回答)を掲載しておきます。 ====(以下、石坂の議会質問と答弁 2017年第2回定例会)==。 (*口述筆記ではないため、正確には区議会の議事録をご確認ください) ★質問★ 石坂: 家庭構成の多様化が進み、少子高齢化による身近な人がいない単身高齢者も増えている状況下での、家庭生活におけるニーズや、いざ支援が必要になった場合のニーズも多様化しています。そうした中で、状況に応じた公正証書の活用を考えていくべきです。 公正証書とは、公証人法に基づき、法務大臣に任命されたm公証人が作成する公文書です。 この公証人は、裁判官や検察官、法務局長などの経験がある法律の専門家であり、準公務員です。また、「公正証書」には証明力があり、執行力を有しており、安全性や信頼性に優れています。 そこで、「愛情と信頼に基づいて共同生活を営んでいる」ことを明らかにし、「両名の共同生活の維持、相互の療養看護及び相互の財産の管理等を目的として」、一方が「任意代理権目録記載の事務を委任し、その事務処理のための代理権を付与する意思を表示し」、相手が「その趣旨を理解したうえで受諾をする」という契約を双方で取り交わし、その内容を公証役場の公証人が両当事者の陳述の主旨を録取し作成をした「財産管理等委任契約公正証書」にしたため、この公正証書の原本の写しである正本に「上記正本は公証人役場において原本に基づき作成交付する」ということが明記され公証人の署名押印がある場合。 なおかつ、身上配慮や健康状態の把握の努力や看護権を含む療養看護に関する特則などを公正証書本文部分に記載をしたり、代理権目録に「次の各書類、印鑑、証書等の保管および委任事項処理のために必要な範囲内の使用。登記済み権利証、実印、印鑑登録カード、年金関係書類、遺言書、戸籍・住民票に関するもの、国民健康保険・介護保険に関するもの、以上に関連する書類等」、「転入・転出の手続きに関する事項」、「医療に関する契約及び介護契約その他福祉サービス利用契約(施設入所契約を含む)に関する事項」、「相手方の子の医療・保育 ・福祉等行政手続きに関する一切の事項」、「事務代行者の指定に関する事項」「以上の各事項に関連する事項」と明記をしてある場合について伺います。 (1)公正証書による委任契約の効果について 同性カップル等がこうした公正証書を持参し、窓口の職員等に提示した場合、 ・戸籍謄本や住民票の写しの発行、転入・転出の手続き、国民健康保険や介護保険に関する保険料の納付書の発行・保険証の交付や再交付、認可保育所の入園手続き、家族同様の共同生活を送る者としての区民相談等の利用は可能でしょうか。 (2)愛情と信頼に基づく共同生活と世帯の取り扱いについて 23区の中野区を除く各区では、男性同士・女性同士の友人同士あるいは同性カップルで同居をしている場合、あるいは同居かつ家計を共にしている場合について世帯主と「同居人」あるいは世帯主と「縁故者」の関係で同一世帯として住民登録ができるようになっています。 転出元の他区で同一世帯であったことを根拠に中野に転入をする際に同一世帯で住民登録をできた方もいますが、中野区では原則的には同性カップル等は同一住所で別世帯という扱いになっているようです。 相互に公正証書を作成し、正本の発行を受けるには1万円以上の金額がかかるため、公正証書がなくても同性カップルが他区と同様に同一世帯になれることが望ましいことは言うまでもありませんが、少なくともこうした公正証書を作成し、今後も安定した関係性を構築する意思のあるカップルについては同一世帯とできる取り扱いをすべきと考えますがいかがでしょうか。 (3)男女の事実婚や独居高齢者などの場合について 男女の事実婚の場合でも、未届けの夫や妻として同一世帯にしている方もいますが、別々の世帯にしている方もいます。また、中には戸籍上婚姻をしている夫婦でも世帯分離をしている方もいます。そして、認知症ではないために成年後見の制度は使えないものの目や耳や足腰が弱り自ら役所に行くことが難しい方などについて別居の親族が面倒を見ているなどの場合があります。 なお、日本公証人連合では、 人間は年を取ると、判断能力はしっかりしていても、身体的能力の衰えによってだんだん自分のことができなくなり、寝たきりになってしまえば、いくら預貯金があっても、お金をおろすこともできません。判断能力が衰えた場合にのみ発動される任意後見契約だけでは不十分です。任意後見契約だけでなく、通常の委任契約も組み合わせて締結しておけば、安心です、としています。 こうした場合にも、記載の仕方は若干変わる場合があるとは思いますが、先ほど述べたような公正証書によって必要な事項を定めて記載をしておけば、先ほどと同様なことが可能となり、同一世帯の夫婦や家族に準ずる関係性であると見てもらい、最初に質問をした区の受付窓口での手続きや相談等を受けられると考えてよろしいでしょうか。 (4)その他 (委任契約の周知について) (こうした委任契約公正証書について、中野公証役場に確認をいたし、法律の専門家である公証人の方の話をうかがいました。その都度委任状を必要に応じて作るやり方もあるが、必要になった都度いちいち委任状を作成する負担を考えれば包括的な委任契約公正証書は有用性が高い。一度公正証書で作成をした後は、銀行等の金融機関でも役所でも問題なく使えるものであり、公正証書の作成時期に関わらず効力を有するとのことでした。 さらに、専門職後見人や市民後見人などによる後見制度について徐々に幅広く知られるようになってきていますが、まだまだ元気なうちから、事故による障碍や老化による認知症に備えて任意後見人やその内容を公正証書による任意後見契約で決めておくことができることに加えて通常の委任契約を結んでおいたほうが良い例があることについても今後周知をしていくことが望ましいと考えますがいかがでしょうか? ★答弁(回答)★ 区民サービス管理部長:わたくしからは、家庭生活を支える委任契約と公正証書についてお答えいたします。委任状ではなく公正証書による手続というご質問でございます。公正証書は公証人法に基づき当事者や関係人の嘱託により、法律行為や司法上の権利に関する事実について作成した文書でありまして、委任状と同等以上の効力があると認識してございます。区の窓口では戸籍謄本等の証明書や転入転出の手続き、国民健康保険証等の発行について公正証書に本人から委任された事項として明確な記載があれば、委任状に変えて手続きをすることは可能であると考えてございます。なお、ご質問で上げられました他の業務につきましては、(生活の実態に基づき業務を行っているため)委任状を求めておりませんので公正証書はもとより必要ございません。 次に同性カップル等の世帯の取り扱いについてのご質問です。住民票は世帯の居住関係を公証するものであることから、住民登録は原則として親族関係にあるものを同一世帯としているところでございます。親族関係にないものを例外的に同一世帯とする場合は、近々婚姻届けを提出することが確実な場合であるとか、離婚により親族関係がなくなった元夫、元妻のいずれかの表記を同居人とするような場合、事実上の養子について縁故者として世帯の認定をするなど限定的に取り扱っているところでございます。仮に親族関係に無い者について広く同居人・縁故者とした場合、居住実態の把握が難しく、原則として親族関係にあり、同住所に居住し、かつ同一生計である場合に同一世帯として住民登録をしてございます。しかしながら、区民のライフスタイルにつきましては多様化していることから、適切な世帯認定の在り方について検討してまいりたいと考えてございます。 次に別居親族など様々な関係における委任についてのご質問です委任者と受任者との関係性に関わらず、公正証書の中で委任契約の内容について確認できればその効果につきましては委任状による手続と何ら変わるものではないと認識をしてございます。 健康福祉部長:家庭生活を支える委任契約と公正証書についてのうち、成年後見制度に併せた委任契約の周知につきましてお答えいたします。認知症や知的障害などによりまして判断能力が十分でない区民の権利と財産を守るため成年後見支援センターでは成年後見制度の周知や相談、市民後見人の育成に取り組んでおります。自分の意志で自分の信頼できる方を後見人として指定をするということは、自分の老後の生活をしっかりと考え計画することにつながるため任意後見契約についての周知も引き続き行ってまいります。財産管理や身上監護などに関する委任契約は判断能力に問題がなくても身体能力の低下により様々な手続きなどが自分でできなくなった際に有効な手段の一つとなりますので、今後はその周知につきましても行っていきたいと考えております。 ===(以上)==== (なお、すこやか福祉センターで保育関係の手続きをする際には手続き内容により例外的に公正証書が必要になる場合があり得るそうです。)
by wishizaka
| 2017-10-12 14:34
| 同性パートナーシップ
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