“LGBT理解増進法案”の与党案(修正版)が13日の衆院本会議で可決されました。
(法案の全文: https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21105016.htm )
マスコミ等で、様々な意見が飛び交っていますが、わたくし1人の意見としては満点ではないが合格点であると考えています。 また、この法律は成立すべき法律であると考えています。
この法案についてさまざまな角度から心配をされている方がいらっしゃいますが、私としては、以下の様に考えています。
【1】「不当な差別の禁止」との文言があることで、「不当ではない差別」という言い訳で差別が容認されるのではないか?また、「政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする」との主旨の文言があることで政府が都合の良い指針を作るのではないか?との危惧について。
障害者差別解消法でも「不当な差別の禁止」とありますが、「不当な差別」の文言が差別の容認には繋がっていないと考えます。また、障害者差別解消法における政府が定める基本方針も差別の容認にはつながっていないと考えます。
なお、障害者差別解消法に関し国が定める基本方針については(下記のリンク①。とりわけその中の 第2-2-(1)〜第2-3-(2)の箇所)をご覧ください。
また、LGBTに関して別扱いが正当な合理的配慮として考えられる例としては、文部科学省が以前から作成している「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」が参考になるかと思います。(下記のリンク②。とりわけその中の4頁) トランスジェンダーの児童に対して、職員用のトイレを使わせる対応も、現段階における合理的配慮としてはあり得るかと思います。
【2】「全ての国民の安心に留意する」とあることで、マジョリティの安心をマイノリティの安心よりも優先してしまうのではないかとの危惧について。
前者については憲法13条の「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」の文言によって、マジョリティの安心をマイノリティの安心よりも優先してしまうことが生じないのと同じくらい、杞憂であると思われます。 後者については、マイノリティが命をすり減らすように抱えている不安を解消するために、この法律ではマイノリティの安心に重点を置くことになるでしょう。しかし、それが則マジョリティの安心を脅かすものではないと私は思います。かつて障碍者に安心なまちをつくることで、障碍の無い人の現在や未来に安心をもたらす取組が様々に進められてきました。マイノリティに安全安心で快適なまちはまわりまわって全ての人にとって安全安心で快適なまちになると私は考えています。 まさにそれこそが、バリアフリーから一歩進んだ、全ての人に恩恵をもたらすユニバーサルデザインの発想だと考えます。 【3】「保護者の理解と協力を得て行う心身の発達に応じた教育」により、歯止めがかけられるのではないかという危惧。 今回の法案にこうした記載があろうがなかろうが、教育基本法第13条には「 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。家庭教育は全ての教育の出発点であり、人格形成の原点である。」とあり、あらゆる教育は保護者の理解や協力が不可欠です。 また、同じく今回の法案にこうした記載があろうがなかろうが、現行の在り方として、異性愛を含めた性教育などは現状発達に応じた教育を行うことになっています。また、その上でLGBTに関する教科書への記載が文科省の教科書検定を合格している実績があることから、発達を理由に指導がなされないことを危惧する心配はないと考えます。
【4】差別を禁じると訴訟や申し立てが増えるのではないかという危惧について 障害者差別解消法によって障碍者が裁判を乱発する様になったとの話は聞きません。また、中野区ではLGBTの尊厳を護ることも内包するユニバーサルデザイン推進条例や人権及び多様性を尊重するまちづくり条例がありますが、訴訟や申立てが増えたと言うことは生じていません。 ましてや、差別を理由として無理難題いうケースも見受けられません。
【5】トイレをどうするのかと言う危惧について 新幹線や、喫茶店やスポーツジムなどにある、男女別ではなく、個人別にトイレは全て個室で、それぞれに便座と洗面台があり、ドアは廊下や踊り場に直接繋がっているというトイレが時代の趨勢になっていくのかもしれませんね。 とはいえ、既存の建物に事業者負担ですぐに変更が強要されることはないと思われます。中野新橋駅では、女性トイレを男性トイレと分離するという当たり前のことがなされたのが2010年頃。それまでは、トイレは男女別ではなく、トイレに入ると、手前が男子小便器があり、背を向けて排尿をしている男性の後ろを通ってその奥が男子大便器兼女子便器のある個室が並んでいるという構造でした。今でも、こうした構造のトイレが古い公園のトイレなどでは今でも残っているように思えます。男女別のトイレが当たり前になってから、それが完全実施されるのには施設改修のタイミングに合わせる等々相当時間がかかりつつも普及してきたという歴史があります。 ( https://kugikai-nakano.jp/shiryou/1491181654.pdf ) こうしたことが完全に実現するまでは、職員用のトイレを使ってもらう、多目的トイレを使ってもらうなど、合理的配慮の範囲で何ができるのかを考えていくことが必要なのかなと思います。 その上で、改めて、、、、、。
2023年6月13日、衆議院本会議において、いわゆる「理解増進法」が本会議で可決されました。この法案は、中野区での条例や要綱や行政計画、マニュアルの在りようから考えて至極当たり前なものであり、LGBTの抱えるすべての問題を解決するにはほど遠いものの、LGBTの抱える困りごとの解消や、多様な人と人との共生を何歩も進めるものであり、現在の中野区で混乱が生じていないのと同様に混乱は生じないものと考えます。また、中野区にとってもこれまでの方向性を更に1歩前進させる後押しとなるものであると考えます。 これは中野区が今後進めていこうとしている方向性とも合致するものであると私自身は考えます。 そして、これは全てのLGBTの人にとって今すぐ具体的な恩恵をもたらすものではなくとも、中野区で暮らすLGBT当事者で困りごとを抱えている人、あるいは今後困りごとを抱え得る人にとって、生きづらさ緩和していく内容となっていることを私自身は歓迎しています。 そして、この法案は、未来に展望を持てない状況にある当事者にとっての「未来に希望が持てる時代への先駆け」につながるものと考えます。 時代に合わせた改正や、施策の進展に伴う改正を望む希望を持ちつつも、今はまずこの法案が成立することを一当事者として、一国民として、一有権者として強く希望しています。 また、今後参議院においては、(文言ではなく)より具体的な内容について議論をして頂きたいと願っています。
by wishizaka
| 2023-06-14 17:55
| 国政や自治体全般の動きなど
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