今年、最後の定例議会が本日で閉会となりました。
本日は本会議にて ・国が決めた「価格高騰支援給付金」の実施に向けて必要な基盤整備(コールセンターの業務委託、システム開発など)についての補正予算が可決。【石坂は賛成】 ・ガザ地区での停戦を求める外交努力を日本政府に求める意見書が可決。(参考: https://twitter.com/ishizakawataru/status/1734480962933948767 )【石坂は賛成】 ・最低賃金1500円の早期実現を求める意見書を政府に提出することについての陳情が否決【石坂は原案に反対】 ・中野区議会傍聴に関する運営ルールの変更と必要な情報開示を求める陳情が可決【石坂は賛成】 他 について取り上げられました。 「最低賃金1500円の早期実現を求める意見書を政府に提出することについて」は反対に先立ち、私は反対討論をしたため、以下に討論内容を書いておきます。(原稿通りに読めていない箇所もあるため、正確な内容は後日掲載される中野区議会のHPの会議録をご覧ください) 《概要》 最低賃金の引き上げについて、実質賃金が下がらない様にインフレ率を踏まえた引き上げが考えられますが、企業・労働者・消費者がお互いに譲り合いながらどこまで耐えることができるか、できないかを見定めながら、スモールステップでの最低賃金の引き上げを行っていくことが必要です。急激に1500円に引き上げることは、人件費の増加に伴い非正規労働者や中小事業者の正規労働者に対する人員削減や、事業者の倒産をもたらす可能性があります。そのため、本陳情に反対をしました。 《全文》 第10号陳情 最低賃金1500円の早期実現を求める意見書を政府に提出することについて 反対の立場で討論を致します。 労働市場が完全市場の場合、最低賃金の引き上げは、労働市場において、労働者がより多く働きたいと考えるため、労働者の供給を増やす方向に作用する反面、一方で事業主の側の労働者を雇用したいという考えを低下させるため、労働者に対する需要を減らす方向に作用すると言われています。 さて、厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査」によりますと、10月に労働者が受け取った「名目賃金」は、2022年に比べて1.5%増えました。しかし、物価の変動を差し引いた「実質賃金」は2.3%減少し、これによって実質賃金は19カ月連続で減少しています。 こうした中、厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、本年10月の、有効求職者数に対する有効求人数の割合である有効求人倍率が東京都で1.83倍、全国で1.29倍となっていて、1倍を上回っている。すなわち求職者数よりも求人数が多くなっています。 また、15歳以上で、働く意欲のある労働力人口の内、無職で求職活動をしている人が占める割合である完全失業率が、本年10月分の労働力調査では、東京都で2.6%、全国で2.7%となっています。働きたい人が全て働けている状態ではないものの、3%以下の状態は、失業者がほとんどいない「完全雇用の状態」と言われる中、東京都あるいは全国で完全雇用の状態を達している状態ではあります。労働力不足まで言われる現在において、これらの数値だけを見ると、賃上げがしやすい環境が整いつつあり、最低賃金引き上げも実現しやすい状況であるとは言えます。 そのため、物価変動に対して耐える余裕がないことが多い最低賃金で働く人について、最低賃金を毎年、インフレ率を上回る率で引き上げていくあるいはインフレ率に近づけていくべきだということであったならば一定の理解ができるところではあります。 しかし、前述のデータを細かく見ていくと、有効求人倍率について、現在の最低賃金が全国2位の県である神奈川県や全国6位の千葉県では1倍を下回っています。すなわち働きたいと思っても十分な求人がない状況です。 ちなみに、最低賃金が高く有効求人倍率が1を上回るのは、東京都、大阪府、愛知県、埼玉県など、その多くが近県からの労働者を受け入れる大企業・大工場などが多い地域などに限られています。また、25歳から34歳の女性の完全失業率が4.4%で3%を上回っています。そのため、最低賃金の引き上げは有効求人倍率や完全失業率の変動を注視しつつ、段階的な引き上げを考えていくことが大切です。 もちろん、企業が限界労働生産性よりも低い賃金を支払って労働者の雇用をしているような場合、企業は高い最低賃金が課されたからといって必ずしも労働者数を減らすわけではありません。しかし、これは大企業で働く正社員には当てはまる場合がままありますが、ぎりぎりの経営をしている中小では正規労働者の雇用を減らすことに舵を切らせる可能性を高め、こと非正規労働者は大小に関わらず雇用を減らす動きが発生します。また、そうした方向に舵を切らない或いは切れない事業者の場合、撤退や倒産を迫られることになりかねず、市場における事業所退出率が上がります。 すなわち経営が苦しい状況下で最低賃金が上昇すると、人員削減をするか、事業を止(や)めるかを事業主は迫られることになります。 また、理論的なことにとどまらず、現実においても、本陳情の区民委員会での審査の際に、担当者から「区内事業者から『最低賃金がこれ以上引き上げられると経営が苦しくなる』という声がある」との答弁もありましたし、私自身も「最低賃金が大きく上がったら人を減らさざるを得ない」という小規模の飲食店の経営者の方の声を耳にしています。最低賃金の引き上げは、中野区内において、中小零細企業の人員削減や倒産を増やす恐れがあり、ひいては働く人の雇用を守ることができなくなる可能性があります。 加えて、例えば、最低賃金で働く人が多い例の一つとして、農繁期に雇われて働く農業労働者がいます。最低賃金は農家のコストを引き上げることになり、それは価格に転嫁せざるを得ないと言われたりもしています。 すこし前の記事となりますが、2021年5月25日 日本経済新聞の「経済教室」のコーナーに掲載された記事では、「最低賃金上昇のコストは誰かが必ず負担することを考えると、特定のグループが過度の負担を負うことなく、企業、労働者、消費者が広く負担を分担していくことに合意することが最低賃金引き上げの鍵になるだろう。」としています。 企業・労働者・消費者がお互いに譲り合いながらどこまで耐えることができるか、できないかを見定めながら、スモールステップでの最低賃金の引き上げを行っていくことが必要であると思います。 なお、その際に、最低賃金を高くしているヨーロッパ諸国では、伝統的に若者の失業が大きな社会問題になっていることを踏まえ、日本においても非正規雇用の失業や若者の就職難を増やしてしまうことが無いように最低賃金の水準を考えていくことが大切です。 そのため、地域によって幅がある現在の最低賃金について、1.35倍~1.67倍に急速に引き上げて1500円とすることは避けるべきです。 よって、最低賃金はスモールステップで引き上げていくべきであると考え、本陳情には賛成でき兼ねるため、以上、私の反対討論と致します。
by wishizaka
| 2023-12-12 18:18
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